安倍元首相。死して闇を残した男。

2022年7月7日。その男は、なぜかむくんで見えた。スーツの中の肉が水膨れしているように見えた。参議院議員選挙公明党の応援を蹴って自民党野単独の公認で候補の応援をするために、マイクを握って話す男はあまり健康そうには見えず、映像の中で実在感をもってその人を見ることができなかった。

2022年7月8日。その男、安倍晋三元首相。奈良県近鉄大和西大寺駅前で応援演説中に、41歳の無職の男に手製の銃で撃たれた。憲政史上最長の首相在任期間を誇った男が凶弾に倒れた。大変なことが起こったが、不思議に驚かなかったのはなぜ? その時、選挙中に亡くなった大平正芳氏を連想した。

大平元首相には闇はない。クリスチャンであり読書家。筆者は総理大臣というとこの人の影を追い求めるが、安倍元首相には闇を見る。何の符号なのか、同じ日に近しいと言われたジャーナリストに性被害にあった女性ジャーナリストへの賠償が確定した。死したその日に、ひとつの闇が晴れていくのは偶然か。

そして暗殺犯が恨みを抱いていたという統一教会と、つながりがあったと噂もされている。政治家一家に生まれ、人柄の良さも持ち合わせながらも、相反する闇の人脈の影がチラつくのは、かえって疑惑の大きさを思わせる。ロッキード事件でも解けない日本の闇を、ここから探り当てることができるだろうか?